3/11を迎える時、思い出す事

空家になってかなり年数を経た住宅だけど、多分、今、身を寄せている所よりマシなのだろう。仮復旧、仮設、とにかく何とかしてくれ…という工事に全力で答えていた頃の事。
玄関を開けるとすぐ8畳程の台所があり、正面の流し台のガス工事と凍結により破裂したガス給湯器の交換を午前中に終わらせなければなりません。現場を進める事だけに集中しているので、どこに誰がいる…などと気にしていられません。が、左側の部屋、ガラス障子のすぐそばに人の気配を感じていました。おばあさんがテレビをかけたまま居眠りしているのかな?と気にも留めていませんでした。
さて、工事が無事終了し、片付けの手を休めた奥様がお茶にしましょう、というので、ガラス障子を開けリビングに入りました。勘違いでした。その部屋には誰もいませんでした。「ここからだと住んでいた家周辺が見渡せる。」と、奥様、、そうかこの現場辺りがぎりぎりで、ここより下は壊滅していました。
帰りしな、障子を開けながらあばあさんがたたずんでいたと錯覚したサイドボードの方を見て驚きました。
染めた髪がサラサラとし、屈託のない笑顔が清々しい、誰にも好かれたに違いない若者の写真と愛用していた思われる革財布がありました。瞬間、よろしく、、と挨拶して出掛けた180センチは越えていた旦那様の足取りの重さの訳と、普通にしているけど、まるでハートに穴が空いてるように見える奥様の健気さの理由が解ったような気がしました。
事実を確認する事は私の仕事ではありません。でも、そこは日溜まりのように、暖かく穏やかな雰囲気に包まれていました、と伝えたかった。